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姿勢

重心の偏りと体のねじれ

重心の偏りと体のねじれ

 簡単な実験をしてみましょう。両足を平行にして肩幅に開いて立ちます。骨盤を左にスライドさせて左足に重心を偏らせます。足の位置は動かさずにお腹を右に向けていくと左足の踵に重心が集まり不安定になります。場合によっては左斜め後ろによろけて倒れそうになるので注意してください。今度は逆にお腹を左に向けていくと左足の爪先側に重心が寄って安定します。この状態で右肩を引けば顔は正面を向きます。

 左重心の人に多いねじれ癖で、左股関節を起点として始まった左向きのねじれを、膝と足首がストッパーとなって負担を受け止め、左を向いた骨盤に対して胸郭は正面を向いたままでバランスを取っている姿勢です。左脚の股関節内転筋・内旋筋と左側腹部(外腹斜筋、内肋間筋)が縮こまっています。上向きで寝ると体幹に対して両脚が右に曲がり、左足の爪先が上向きか内向きに倒れ、左肩は床から少し浮く傾向があります。あぐらでは左膝が浮きやすいです。

 ねじれ癖を減らすには、縮こまっている筋肉のストレッチと右足の安定性の強化が有効です。股関節の調整が重要で、体幹部のねじれは副産物的なものですが、腰への負担が少ない左側腹部のストレッチ法を説明しておきます。上向きに寝て両膝を立ててから右に倒します。右手で左手の甲を持ってバンザイをして上に伸ばします。肋骨の動きを感じられるように大きな深呼吸をゆっくりと4~5回します。腕を楽な位置に戻して少し休みを挟み、これを数回繰り返します。

 このストレッチをした後では、両膝を右に倒す時の抵抗感が減っているはずです。体をひねると痛む軽い腰痛なら、これで楽になる場合もあります。話がそれますが、目を覚ました時に伸びをして足をつってしまう人は、両膝を立てて足裏を床に付けたまま上半身だけで伸びをすると、足をつりにくくなります。

 左重心のねじれ姿勢は、右利きの人がバットやラケットでボールを打つ時、右手でボールや槍を投げる時、柔道の右組で体落としや内股を掛ける時、ボクシングのオーソドックススタイルで右ストレートを打つ時などの、体幹のねじれで溜めた力を解放する直前に見られる態勢と共通しています。体重の前方移動と体幹の回旋力を利用する運動では上半身の動きに意識が向きがちですが、右利きの人では左足の安定性と柔軟性も重要です。

 体幹に溜めた回旋力解放後のフォロースローの際に、左股関節の内旋が制限されると腰椎への左回旋ストレスを逃がせません。腰椎全体での回旋方向の可動域は約5度と僅かしかなく、回旋ストレスの蓄積で椎弓右側部に疲労骨折を起こすリスクが高まります。思春期に多い腰椎分離症の発生機序の一つです。左足の踏み込み時に爪先が内向きに入ると、腰だけではなく、足首や膝の外側への負担も増えるので注意が必要です。

 右重心の人に多いねじれ姿勢はボクシングのサウスポースタイルに近くなり、その対策法も左右逆になります。どちらも重心の偏りから起こる体のねじれ癖ですが、外傷や関節の変形、歯の噛み合わせや視力の左右差なども姿勢に影響するので、必ずしも今までの説明通りになるわけではありません。

 先天性股関節脱臼などの明確な原因がなくても、関節の付き方や骨の形は左右でバラつきがあり、結構アバウトな造りになっています。元々の形態上の左右差に重心の偏りと仕事やスポーツでの動きの癖なども加わり、体の歪みが出てきます。

 人体は自然の造形物であり、厳密に左右対称でなくても問題なく機能する適応性を備えています。極端にバランスを崩していれば健康上の不都合も出てきますが、多少の歪みも含めて全体でそれなりにバランスが取れていれば良しと考え、あまり神経質になる必要はありません。

身体イメージと姿勢の歪み
利き足が先か、軸足が先か?